連載

vol.04 アフリカ海産物の知られざるパワー(SEP 2004)

たこ焼騒動@モロッコ


▽ 大阪名物たこ焼きのタコは

モロッコの海が荒れると日本でたこ焼が食べれなくなる?

まるで、「風が吹けば桶屋がもうかる」だが、こっちの理屈はもうちょっと単純。
そう、たこ焼きの中のタコは実はアフリカ生まれだったのだ!

日本近海におけるタコ漁獲高が年々、減少している。数少ない国内産の地タコも、ほとんどは料亭などへ納められ、スーパーなんかで見かけるタコたちのほとんどは舶来品。7割が輸入物といわれる。

現在輸入されるタコのうち、4割がモロッコ産で、モーリタニアやセネガル産等を合わせれば7割がアフリカから来ている。
中でも、たこ焼き用のタコには、水分が少なく身がしまったものが求められるので、モロッコ産は条件にピッタリ。まさに、たこ焼にはモロッコ産がひっぱりダコ!なワケ。


タコの輸入先▽ 乱獲の果てに

そのタコ輸入に異変が起きている。2000年をピークに、モロッコ産のタコ輸入が減り続けている。
日本からの需要に追いつけと、モロッコではタコが乱獲され、いまやタコが取れなくなってしまったらしい。

そういえば、ブームになった『築地銀だこ』1号店がオープンしたのが97年。
懐かしいなぁ、おいしいなぁと一億人がたこ焼をホクホクと頬張っている間に、モロッコの海は荒れ果ててしまったのだ。

このタコ資源の枯渇に危機感を覚えたモロッコ政府が、2003年、資源保護のためについに禁漁措置を発動するほどに。
その影響で、かつてはキロ300円だったモロッコ産タコは、今やキロ1000円近い。煽りを受けて、巷のたこ焼き屋でも15個入り400円が600円になり、5個入り300円が10個入り500円になったり。

たこ焼はなんたって庶民の味。ベンツ一台が10万円値上げされたって知ったこっちゃないが、たこ焼一個が10円値上げされるとなれば、すわ一大事。庶民の嘆きは海より深い。


▽ カサブランカ? タコブランカ?

このタコ焼におけるタコのアフリカナイゼーションは、奇しくも本物のアフリカナイゼーションと同様に1960年代から進展してきた。
たこ焼といえば、その祖先は昭和初期の大阪のこんにゃく入り「ラヂオ焼き(タコなし)」なるものに遡り、タコが入るのは戦後のこと。

当初は兵庫や北海道の国産タコが使われた。1950年代の遠洋漁業が発展し、日本の漁船が世界中へ出かけていき、1959年にアフリカ北西岸の好漁場が発見されたという。

モロッコではそれほどタコが食べられていない。第一、似合わないしね。
かの名作『カサブランカ』だって、ハンフリー・ボガードがウイスキー片手にタコ足かじってたら、あそこまでヒットしなかっただろう。
そう、この漁場の飛躍的発展の裏には、ひとえにわが日本のタコ食う人々の存在があるのだ。恐るべし、日本の消費者パワー。

その後、200海里時代をむかえ、日本漁船は80年代にはモロッコ沖漁場から撤退し、モロッコやモーリタニア漁船が活躍する時代となる。
ちなみに、彼の地では、日本から伝えられたまっことなき『タコツボ漁』が行われているらしい。

おさかな天国@アフリカ大陸


▽ 鯛でタコを釣る

さらに、おどろくなかれ、なんと、一生に(たぶん)一度のあの晴れの舞台にまで、外国勢いや、アフリカ勢が進出していた。純白の角隠しに、紋付袴で並んだ新郎新婦の前に並んだ、晴れの日を祝うメダタイ魚、タイもアフリカから来ている!

そもそもモロッコのタコも、元々はこのアフリカ北西岸で取れるタイを目当てで漁に行ったら偶然見つかった「副産物」みたいなもの。エビでタイを釣るというか、タイでタコを釣っちゃったんですね。

本来の目的だったタイは、漁獲量の減少にも見舞われた。が、それでも今でも全輸入量の約5分1がモロッコ、ギニア、コートジボワールなどアフリカ諸国からである。
これらのタイは、あんまり高級ではない結婚式場のエコノミー・タイプの料理やら、スーパーの特売の「焼き鯛」によく使われている。我が愛しのアフリカ大陸よりのタイ。披露宴会場でアフリカ産のタイに出会ったら、喜ぶべきか悲しむべきか……。


イカの輸入先▽ 空飛ぶモンゴウイカ

イカも派手な日本進出を果たした魚介類である。
こちらもタコと同じく、タイを探しに行ったらイカがたくさん獲れてしまったパターンで日本への輸入が始まった。

一口にイカと言っても、アフリカ北西岸でとれるのはコウイカ。日本でいうところのモンゴウイカである。

日本のイカ史上、モンゴウイカというのは東シナ海で獲れるだけでそれほどメジャーではなかった。しかし、1960
年代のアフリカ北西岸漁場という金脈発見以来、揚げてよし、刺身にしてよしと、一躍イカの王様に躍り出た。
昨今では、アフリカ産モンゴウイカには日本直行組は少なく、タイでトランジットして揚げ物などに加工されてから日本の地を踏む輩も増えてきたという。

驚いたことに、「おさかな天国@アフリカ」はまだ終わらない。
他にも、南アフリカの伊勢エビや、アンゴラ〜南アフリカ沖のイワシなど、目白押しだ。日本に限らず、スペインや遠く韓国やロシアからも漁船が群れを成して押しよせている。
ロシアなんか、獲ったイワシを船内で加工して缶詰にまでしてしまう装置を備えた巨大船でやってくるらしい。

(DoDo World News 2004年9月 第94号掲載)

written by アフリカルチャー・マップ案内人|吉田 未穂

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