連載

Vol.16 村の暮らし(2)

 女たちは頭の上の琺瑯(ほうろう)の器を下ろすと、小さな瓢箪の柄杓で私のなべにひとつ、ふたつと汲みだしてゆく、おおよそペットボトル一杯の量になるまで汲み入れて100フラン、日本円で約20円だ。早速、手伝いをしてくれているセニ君が七輪にかけて沸かし始める。村人たちでさえも、ここの牛乳は沸かさなければ、お腹を壊すのだそうだ。


 熱く沸かした牛乳をマグカップに取り、後は来ている子供たちに渡してやると、冷めるのを待って一人ずつ飲んでゆく。ハルミの分け前と牛乳の分け前が、子供たちにとって朝の楽しみなのだ。飲み終わり食べ終わると何時の間にか居なくなる。


 もうこの時間になると陽も高くなり気温も30度近くになってくるのだが、木陰の爽やかな風に吹かれていると、アフリカの田舎暮らしも悪くないと感じてくる。実際、電気も水道も無いし、買い物だって12キロ離れたバンカスに行くか、一晩泊まりでモプチまで行かなくてはならない不便さはあるのだが、この村で暮らすなんとも言えない心の平安さが好ましいのである。


 暫くすると村のおかみさんたちが自分で作った野菜などを売りにくる。野菜といっても半砂漠の砂地なので出来る野菜に限りがある。たいていサラダ菜やトマトなどで、私のところへ持って来ると必ず買ってもらえると、彼女たちは考えているようだ。


 ちなみに村の物価を書いておこう。鶏は一羽700~1000フラン(CFA)。トマトは4個で100フラン。サラダ菜は1株50フラン。羊肉1キロぐらい一塊で500フラン。ハルミ10個で100フラン。ウォーミ10個で100フラン。リプトンのティーバック4個で100フラン。ビール(カステル)1本1000フラン、われわれにとっては安いものだ。日本円に直すにはフランに0.2を掛けると円の値になる。つまりニワトリは一羽200円ということである。


 小麦粉を練って油で揚げたハルミと同じように、ミレットの粉を水で溶いたものを、鉄板に窪みをつけたもので焼いて作るのがウォーミ。回転焼きのようにして焼いたもので、ミレットの粉だけあって、ちょっとばかり癖がある。日本人のツーリストたちに振舞うと、好き嫌いがあるようだ。これに少しばかりお砂糖をかけると、結構なお菓子になる。子供たちに井戸からの水を頼むとき、これが結構なお駄賃になった。

written by 大阪芸大名誉教授|森 淳

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