連載
ドゴンのテリ村から
神話の民と呼ばれるドゴン村の日々
Vol.15 村の暮らし(1)
東の空が明るくなって、やがて砂丘の向こうに朝日が昇ると、隣のキャンプマンの泊り客が起き出して、次の目的の村への出発準備をする音が聞こえてくる。キャンプマンでの朝食はピンポン玉の大きさに、小麦粉を丸めて油で揚げたハルミと紅茶が出されていた。簡単な朝食のあとは、大きなリックを背にして8時頃まだ涼しいうちに歩けるようにと、トレッキングの客たちは断崖沿いの道を、隣村のエンデ目指して歩いていった。
ツーリストたちがそれぞれに出発すると、やがていつものように子どもの声や、女たちの声が聞こえてきて、村では普段の生活が始まってゆく。私はいつものように栴檀の木陰に椅子を据えて、セニが沸かしてくれた紅茶を大ぶりのコップについで、毎朝売りに来るハルをつまむ朝食を始める。
毎朝8時、空中状態さえ良ければNHKの短波放送が入ってくる。日本の時間では午後5時、夕方なのでニュースを聞くことが出来るし、相撲のときは国技館からの中継放送も入ってくる。これも日課のひとつになっている。
この時間になると、きまってボロロの女たちが頭の上に載せた琺瑯(ほうろう)びきの容器に入れたミルクを売りにくる。ボロロの牛飼いの人たちは、雨期の間は断崖の上の草原で牛を飼っているのだが、10月乾季になると断崖からくだり、テリ村のはずれにモロコシの茎などで小屋を葺き、断崖下での牛飼いが始まる。一番の目的はテリ村の乾期になっても決してかれない井戸があるためだ。夜明けとともに牛を井戸のそばに集め、水飼いが始まる。三百頭ばかりいるのだから、時間もかかる。それでも村人たちとの揉め事はない。彼らにとって畑に落としてくれる牛たちの大量の糞が、大切な肥料になるのである。
男達が牛を追って放牧へ出てゆくと、女たちは朝絞った牛乳を売りにくるのである。
村はまた同じように単調な一日が過ぎてゆく。断崖はめくるめく太陽に照らされて輝き、空には雲のかけらも無い。今日もまた暑い日になるだろう。