連載
ドゴンのテリ村から
神話の民と呼ばれるドゴン村の日々
vol.08 村の生活が始まった(後編)
12月20日過ぎて本格的にハルマッタンの風が吹くようになり、少し高台になった学校の工事場から見ると、村の南側にある井戸脇の大きなバオバブあたりから向こうは砂塵で霞み、遠くバンカスの方面はすっかり吹き荒れる砂塵で何も見えない。
砂の世界の広がりである。
砂嵐の中ではマスク無しでは息も出来はしない。こんどはマスクはもってきたものの、ゴーグルを持ってこなかったのは失敗だった。
ハルマッタンの砂嵐の中ではマスクがあるので息はできるのだが、目は開けられず風が通り抜けるまでは、目を閉じたままで何も見ることはできなかった。
工事場から帰って、仮住いの前に生えているセンダンの木陰に据えた椅子に座っていると、次々に村人達が訪れてくる。
何も取りたてて話題になるものはないのだが、何人かの老人たちが、入れ替わり訪れる。別段何もすることも、話もないまま黙って座っているばかりだが、お互いに何か心に響き合うようなものがあるようだ。
そこには安定した時間が流れているのを感じる。やがて日差しが移るとテーブルや椅子を抱えて日陰に移動する。
そしてちょっとだけ時間が過ぎて行ったのだと感じている、唯それだけだ。アフリカでは時間がゆっくり流れている。
塀で囲まれている仮住まいのコンパウンドには、ハルマッタンの風は塀に遮られて、開け放された入り口の所を外側から風と共に、まるで芝居の幕を引くようにそこだけ砂塵が流れて行く。
そして右手の家の壁に突き当たると、渦を巻いてコンパウンドの中を吹きまわる。老人達は一斉に頭に巻いたターバンで口をふさいで、砂塵を防禦する。
一日が何事もなく過ぎて行く。アフリカで過ぎて行く時間は、まるで流れの中にたゆたうている木の葉のように感じる時がある。
それはアンニュイな時間ではなく、自分の内面の中に静に浮かんでいるような自分を感じているのかもしれない。アフリカでは静かに時が流れて行くのだ。