連載
「もっとケニアを知る旅」案内人独白!!
ケニア在住の早川千晶さんが見たケニアの姿
Vol.15 ドゥルマの子供達がキベラの子供達に出会う迄3
様々な問題が発生
キベラスラムの子どもたちが、ミリティーニ村へ引っ越すための計画が本格的に始まった。子どもたちを村のコミュニティが受け入れるという、その始まりは感動的だったが、いざ具体的な準備となると一筋縄ではいかない様々な問題が発生してきた。
ただでさえ貧しい村人たちの生活だ。子どもたちの食費、学用品、もろもろの生活費はどうするのか、どの家庭が受け入れるのか、病気になったらどうするのか、食文化の違い、宗教の違いなど、突き詰めていくと、ため息が出るほど大変なことだ。
最初は面白おかしく楽しむだろうが、日常生活ともなると終わりのない時間を共に過ごすことになるのだ。その中で、感情的な問題も生じるだろう。他人の子より自分の子がかわいい、という感情が生まれたとしても責めることはできない。
私たちは、起こり得る状況をひとつひとつ思い浮かべながら、時間をかけて話し合った。村の人々にもキベラに来てもらい、スラムの状況を見てもらった。村の人々はキベラスラムの生活の厳しさに驚きながらも、共感と理解を深めてくれた。
ジュンバ・ラ・ワトト(子どもの家)
最終的に、私たちは村の中に「子どもの家」を作ることにした。村にも孤児や恵まれない状況にある子どもたちがいる。キベラの子どもたちと村の子どもたちが、みんな一緒により良い状況で成長していけるといい。「子どもの家」は村の子ども公民館のような役割を果たす場所にしようと考えた。キベラからやってきた子どもたちはここで生活し、恵まれない状況にある村の子どもたちも、ここで食事や勉強をして、夜寝るときだけ各自の家に帰る。
この子ども公民館を「Jumba La Watoto」(ジュンバ・ラ・ワトト=スワヒリ語で”子どもの家“の意味)と名付けた。3部屋の一軒家を、月額3000シリング(約5000円)で借りて、ジュンバ・ラ・ワトトははじまった。
地域社会の総力をあげて
私は長い間、キベラスラムで貧困児童や孤児、虐待児などに関わってきたが、子どもたちが生活する施設を作る必要性を感じながらも踏み切れずにいた。なぜならば、いわゆる「孤児院」というものが、社会の中で隔絶された存在になってしまいがちだと感じていたからだ。子どもたちは隔離された空間で生活するよりも、地域社会に育てられながら成長していくのがいい。アフリカの村社会には、そんな地域社会のつながりがまだまだしっかりと存在していた。
ジュンバ・ラ・ワトトは、地域社会から浮き上がった孤児院としてではなく、地域の人々みんなで作り上げ、村の生活に溶け込んだ場所にしたいと思った。村の総力をあげて、その準備がはじまった。
キベラから、若い男性の先生ひとりが派遣され、子どもたちと一緒に生活することになった。ケビン先生という、孤児で苦学してきたスラム暮らしの青年だ。母親役になるのは、村のママたちだ。アミナさんとママ・カテンベがおいしい食事を作ってくれる。毎日の食事はキベラから11人、村から11人の合計22人の子どもたちがここで食べるが、土曜日には100人ほどの村の子どもたちにも給食を出すことにした。小さな図書館も作った。村の子どもたちはいつでもここに遊びに来て、本を読んだり勉強したりできる。ケビン先生はここで放課後の寺子屋を開くことにした。学校の授業だけでは十分ではない補習をしたり、重い病気で学校に通えない村の子どもがここで勉強できる。
みんなで暮らす大きなおうち
昨年末に準備が終わって、いよいよジュンバ・ラ・ワトトがオープンすることになり、キベラの子ども11人を連れていった。村のコミュニティ全員が集まってくれ、開館式を行なった。村のママたちが、炭の七輪でおいしいケーキを焼いてくれた。村の長老のひとり、ババ・カテンベが村人たちにこう語りかけた。
「この子どもたちは今日から村の一員になった。彼らはこのジュンバ・ラ・ワトトで寝泊りするけど、村の子どもだ。悪さをしているところを見かけたら、叱ってやってくれ。おなかがすいているのを見かけたら、食べさせてやってくれ。私たちみんなの子どもだ。良く育てていこう」。
こうしてジュンバ・ラ・ワトトの生活がはじまって数カ月が過ぎた。イスラム教徒の村人たちのコミュニティで、キリスト教徒のキベラの子どもたちはすくすくと育っている。これからも簡単ではない問題がいくつも持ち上がってくるだろうが、みんなで協力しあって解決していけばいい。「みんなで暮らす、大きなおうち」。地球全体がそんな大きなおうちになれたら、世界はもっと平和になるのに、と思う。
(おわり)


画像:
上:オープニングのマテラさん
下:ジュンバ・ラ・ワトト
早川千晶さんがCDを制作!
キベラスラムの子どもたちと、スラムの若きゴスペルグループが歌う「生きる力を与えてくれる歌」。
TWENDE NYUMBANI
(おうちに帰ろう)〜スラムからの歌声
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日本販売窓口:フェアトレードショップ
「フラヒエニ・アフリカ」石原輝
TEL:022-247-4225
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