連載

Vol.14 ドゥルマの子供達がキベラの子供達に出会う迄2

スラムの子どもたちと遠足へ

 この夏休み、キベラスラムの寺子屋の子どもたちを連れて、海岸地方のドゥルマランドにあるミリティーニ村に遠足に行ってきた。このマゴソスクールの子どもたちの多くは、家族や生きる場を失って浮浪児となったり、虐待を受け続けた末に逃げてきた子どもたちだ。そんな子どもたちを、この村に連れてきたらいい、とミリティーニ村の長老マテラさんが言ってくれたことをきっかけに、まずはスラムと村の子どもたちの交流の機会として、遠足を企画したのだ。

 マゴソスクールの子どもたちは全部で130人もいるので、その中からまずは最も生活状態の悪い子どもたちを11人、優先して連れていくことになった。継母に虐待されたうえに捨てられて、浮浪児となったトニー、実兄からひどい虐待を受け続けて夜中に傷だらけで逃げてきたアピヨ、崩れかけた家に母親と暮らしているインバラ、アル中の父親に苦しめられているアギーなど、10歳から14歳の11人の子どもたちがキベラスラムからバスに乗ってモンバサへと向かった。

 モンバサまでの長い道中、子どもたちはワクワクしながら歌い続けていた。何しろ、キベラスラムからほとんど出たことがない子どもたちだ。ナイロビを出発してしばらくしたら、道路の両脇はサバンナの風景になった。そこにシマウマやバブーンの姿を見つけて、子どもたちは大騒ぎ。スラムの子どもたちにとっては、こんな野生動物を間近で見る機会など、生まれてはじめてのことなのだ。

 サバンナから熱帯へと風景は変化していき、ココナッツの木々に囲まれたミリティーニ村に到着したら、長老マテラさんをはじめとして、たくさんの家族や近所の人々が温かく迎え入れてくれた。村の広場を埋め尽くすほどの人が集まり、次から次に挨拶してくる。特に村の子どもたちは、自分たちのお客さんだから自分たちでもてなすのだ! とすごい張り切りようだ。それから4日間の楽しい交流がはじまった。


初めての田舎に大はしゃぎ

 「学校に行こう」と誘われて、キベラと村の子どもたちは連れ立って散歩に出かけた。家の裏の道を越えると、なだらかな丘がいくつも連なる丘陵地帯が延々と広がっている。丘を登ったり降りたりしながら、田舎道を歩く。よく晴れた空高く、トンビが飛んでいる。子どもたちの間から、自然に歌声があがってくる。
 大きなバオバブの木が見えてきて、村の小学校に到着した。広々とした校庭を走り回って遊ぶ。粗末なバラックが密集して建ち並ぶスラムでは、こんなふうに走り回って遊べる場所などなかなかない。スラム中、どこもかしこもゴミだらけだし、汚物が溢れるドブからは悪臭が漂っている。子どもたちはバオバブの木まで走って、丘の上の最も見晴らしのいい場所に出た。

 「あっ、水が見える。海だ!」

 遠くを指差して、エリックが叫んだ。その他の子どもたちも、口々に「海だ! 海だ!」と騒ぎはじめた。生まれてはじめて目にした海に子どもたちは興奮している。キベラスラムから500kmも離れた場所にやってきたのだ。

 夕暮れ時、長い散歩から家に戻ってくると、ママたちが裏の畑からトウモロコシを取ってきてくれと言った。そこで子どもたちはそれぞれ手に籠を持って畑へと向かった。キベラには畑を作れるスペースなどないから、こうして畑にトウモロコシを取りに行くなど初体験の子どもたちもいる。慣れた手つきでトウモロコシをもいでいく村の子どもたちを真似て、ぎこちなく収穫するキベラの子どもたち。やることすべて楽しくてたまらない、という様子だ。その姿を見ていて、私はなんだか不思議な気持ちになってきた。どうもこの光景は、見たことがあるような気がする。まるで日本の林間学校みたいだ。
 

なぞなぞ、踊り、そして笑顔
 
 夜になったら、家の前の広場に焚き火を炊いて、長老マテラさんが子どもたちを呼んだ。夕食前の楽しい時間である。アフリカの村々では、夜になるとこうして火を焚いて、その周りに人々が集まって、昔話やおとぎ話などを聞くのを子どものころに楽しみにしていたと聞いたことがある。

 だけどそうやって昔ながらのゆったりとした時間を楽しむ村は、ケニアではどんどん少なくなっているに違いない。ドゥルマの人々の間では、今でもそんな習慣が生きている。火を囲んで、長老と子どもたちが「キロンドーニ」「チェカ!」という掛け声を掛け合い、なぞなぞ遊びを楽しむ。

 「顔はトゲだらけで醜いけれど、中はとっても色白でいい匂いの娘さん。誰だ?」

 「パイナップル!」

 という具合で、おもしろいなぞなぞが飛び交う。 そして夜もどっぷり更けてから、タイコを叩き、踊りがはじまる。電気のない村の広場で、月明かりと焚き火に照らされながら、村の子どもたちと一緒にキベラの子どもたちも踊る。すっかり仲良しになった子どもたちは、手をつないで踊りの輪の中に入っていった。肩を激しく揺らしながら踊るドゥルマ民族独特の踊りにキベラの子どもたちはびっくりしている。たくさんの子どもたちの笑顔が、焚き火に照らされていた。

(次号に続く)


09トウモコロシ.jpg

09村とキべラの子どもたち.jpg

画像:
上:トウモコロシ畑
下:子どもたち

written by 早川 千晶

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