連載

Vol.8 ナクル湖で神戸先生に学ぶ自然破壊と環境保護

ケニアを熟知した神戸先生の不思議な魅力

 道祖神のスタディ・ツアー「ケニア雑学入門」は、キベラ・スラムを訪問したり、農村にホーム・ステイしながら、力強く生きるケニア人と交流し、ケニアという国に深く触れていく地元密着型のスタディ・ツアーだが、この国の現状を理解するためには自然と動物と人との関係を抜きにしては語れない。

 ツアーではケニア在住33年の獣医師・神戸俊平先生と一緒にナクル湖国立公園をサファリするという贅沢な一日が用意されている。神戸先生は、ケニアの自然環境や野生動物を守るための活動を活発に展開されており、さらにHIV /エイズ・カウンセリング、ストリート・チルドレンの厚生のための活動など、多方面からケニア事情に精通されている方なのだ。おとぼけタッチのなんとも言えない絶妙なテイストをかもし出しつつ、自然環境破壊やゾウの密猟の話題になると情熱的に激論を交わす。そんな神戸先生の不思議な魅力に、ツアーの参加者は誰もがノックアウトされてしまう。


ナクル湖の微妙な循環体形

 さて、以前に「ケニア雑学入門」で、神戸先生と一緒にナクル湖国立公園に行ったときのことだ。神戸先生は年に二回、ナクル湖で、野鳥数の調査に参加しているという。湖畔で車を降り、神戸先生のあとについて、実際どのようにカウンティングをするのかということを教えてもらう。

 ナクル湖は有名なフラミンゴをはじめとして、多種多様な野鳥たちの楽園である。

 しかし、ナクル湖での野鳥数は減少しているとして心配されている。それはなぜなのか。果たしてこれからも減少しつづけていくだろうか。どのような対策が立てられるのだろうか。それを探るために、神戸先生は野鳥のカウンティングに参加したり、周辺地域の公害などの調査を行っている。

 湖畔を歩きながら、神戸先生はナクル湖の水・フラミンゴ・ペリカン・藻・魚の微妙な関係について語ってくれた。

 「ナクル湖は流出河川を持たない湖で、水分が蒸発することで湖水は強アルカリ性に保たれており、それにより藻が発生しやすい条件にある。二種のフラミンゴのうち、コフラミンゴはこの藻を食べ、それと同じ藻を食べる魚もいて、その魚をペリカンが食べる。実はこの魚は、もともとナクル湖にいた魚ではなく、外から持ち込まれた魚で、それが繁殖したためにナクル湖にはペリカンが来るようになった。さて、ナクル湖の湖水のアルカリ濃度の度合いによって藻の発生量が決まるが、藻がたくさん発生するとフラミンゴと魚も増え、それによってペリカンも増え、ペリカンが増えると魚が減り、藻が増えるとフラミンゴが増え・・・という具合で、ナクル湖の『水・フラミンゴ・ペリカン・藻・魚』は、微妙な関係性を持っている。そのバランス具合を今あなたたちの目の前にどのくらいの数のフラミンゴやペリカンがいるかということから知ることができるのだ。」


汚染されるナクル湖で

 私たちは、こんなお話を聞きながら、ずいぶんと長い時間マクル湖の湖畔にたたずんでいた。ナクル湖のアルカリ濃度というのはこのように野鳥が生息するために大変重要な要素であるのに、過去10年ほどの間にナクル湖にはどんどん汚水が流れ込んでくるようになった。なぜかというと、下水処理の対策を十分にしないままにトラシャ・ダムからナクル市周辺へ水道管が引かれ、盆地になっているナクル湖に向かって汚水が流れ込んでくるようになったからだという。汚水が流れ込み、湖水の条件に変化が生じたら、野鳥の数にも当然影響が生じるのだ。

 神戸先生は、国立公園の中を通過している小川を見せに連れて行ってくれた。その水には、洗剤の泡が立ち、ビニール袋が浮いていた。それがそのまま湖に流れ込んでいる。

 私たちは夕暮れまで湖畔で野鳥を眺めていた。誰からともなく、湖畔に落ちるゴミを拾いはじめた。拾っても拾っても、地面の奥深くまで延々と重なって積もっているビニールゴミ。私たちは、あたりが薄暗くなるまで黙々とそれを拾い続けた。

written by 早川 千晶

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