連載
「もっとケニアを知る旅」案内人独白!!
ケニア在住の早川千晶さんが見たケニアの姿
vol.03エコ・フレンドリーな旅のススメ
「エコ・フレンドリーなロッジとは」
サファリ・ロッジに泊まるとき、こんなサバンナの真ん中で、温かいシャワーを浴びられて、豪華な食事が食べられることに、疑問を抱いたことはないだろうか?
今では24時間電気がつくロッジがほとんどだが、それを当たり前だと思うようになると怖い。
人間にとって便利な生活環境を作り出すことと、多種多様な野生動物が生息できる自然環境を守ることは、相反する方向性であり、簡単に折り合いがつけられるものではない。
生態系へのインパクトを無視して、やりたい放題やっているロッジがいくつもあるが、そんなことしていたら観光客が求める野生動物たちはあっという間にいなくなってしまうよ、そうなったらあなたたちはどうするの?と聞きたくなる。
私はマサイマラ国立保護区の北西部に位置するキチュワテンボ・テンテッド・キャンプが好きなのだが、それは国立公園や保護区で、「エコ・フレンドリーなロッジ」と銘打っている宿泊施設のなかで、キチュワテンボはなかなかがんばっているロッジだからだ。
ゴミ処理、燃料確保、水の浄化や廃水処理などのエコ対策はもちろんのこと、地域住民であるマサイの人々のための福利厚生事業、地元小学生への環境教育などにも力を入れている。
しかも、これらの内部事情に興味を持つ観光客には、誰にでも「サファリ・ロッジ運営の裏の裏」まで臆することなく見せてくれる。
私はよく、サファリ・ツアーのお客さんを、このキチュワテンボの「エコ対策見学コース」に連れていく。私の友人でもあるロッジ・スタッフのマシボさんが案内してくれる。
「キチュワテンボのエコ努力の数々」
マシボさんは、キチュワテンボの敷地内に植えられている植物はすべて、この地域の在来種のみだと説明した。当たり前だと思うだろうが、あちこちのサファリ・ロッジで、サバンナに咲いているはずもない色とりどりの花が咲き乱れているのを見て、「あら〜、さすがアフリカね!」と喜んで記念撮影している観光客をよく見かけるのだから、通常のロッジはそのへんの意識が薄いらしい。
外来種は持ち込まない、というのは生態系を守るためには重要なことである。さらにキチュワテンボには、殺虫スプレーは置かれていない。むやみに昆虫を殺しては、健康な生態系を維持することはできない。
シャワーのための湯を沸かす燃料には、コーヒーの殻を利用した炭が使われている。通常の木炭より数倍高いが、木炭を作るためにどれだけの森林が伐採されているかというのは深刻な問題だ。
発電するためにはディーゼルの発電機が使われているが、その煙もそのままで排出しないように、一度水を通して浄化させるシステムを数年計画で作っている。
発電機が発する音も周辺の動物たちに悪影響なので、防音装置を取り付けている。
ゴミは完全に分類して、プラスチック類はナイロビに送り、リサイクル工場に引き取ってもらう。
生ゴミは、キチュワテンボの裏にある森の中に深い穴を掘って捨て、一年ごとにその穴を埋めて植林をしている。現在使われている穴には、野生動物が生ゴミをあさらないようにガッチリと蓋をしている。
「ロッジの舞台裏を知るツアーから学ぶ」
ロッジの裏をぐるりと回って、スタッフの生活の場を訪問する。宿舎、食堂、娯楽ルーム、教会、診療所、図書室、サッカー場など。ロッジでてきぱきと働くスタッフの素顔を垣間見て、親近感が湧く。地元のマサイの人々も、これらスタッフ用の設備を利用できる。
生態系や動物、昆虫、植物などに関する資料を取り揃えたセミナールームは、スタッフや地域住民の環境教育のためにも活用されている。地元の小学生に、ロッジの車とガイドを使って遠足もプレゼントしている。
動物サファリは通常、観光客ばかりが楽しめる贅沢な遊びであるが、地元の人々も実際にそれを体験することで、理解と意識啓発を図ることができる。
このような、サファリ・ロッジ運営の舞台裏を知るツアー&レクチャーは、だいたい2時間くらいで体験することができる。
こうして知る機会を持てば、それからあとは、自然や動物に触れるときに自分の意識と理解の度合いが変化していることに気付くだろう。そして、「自然大好き」だと言いながらも、虫除けスプレーを散布して、大量なゴミを出しながらアフリカを旅している自分自身の矛盾と向き合うことになる。
完全にエコ・フレンドリーな旅をすることは不可能だけれど、「知る」ことと「知らないままでいる」ことの間には大きな違いがあると私は思う。
このような「エコ・コンシャスなロッジ」を選択して旅のプランを立てることも、自然環境保全のためには効果的だろう。
動物を見て喜ぶだけではなく、自然環境保全の現状や今後の方向性について考える機会を持って欲しい。それは必ず、あなたの旅をさらに深く有意義なものにしてくれるはずだ。