連載

vol.02 リアリティのある旅のススメ

「キベラはケニア最大のスラム」

ナイロビにキベラという巨大なスラムがある。人口80万人ともいわれているキベラ は、ケニアで最大規模のスラムだという。

私はこのスラムで、学校や図書館作りなどの活動を行っているため、日本からの観光客にキベラ・スラムへの案内を求められることがよくある。訪問希望者の目的はさまざまだ。動物を見るだけのケニア旅行ではなく、 もっと人々の生活に触れたいと思う人、福祉関係の仕事に従事している人、アフリカの社会問題について学びたい人、ボランティア活動がしたい人…。

スラムを訪れて、そこで行われている活動を見学することで、今後の自分の人生に何らかの形でその体験を活かしていきたいと願う真剣な人たちが多いので、できる限りその願いに応えてあげたいと思う。

しかし、スラムというのは様々な特殊事情が存在する生活圏であり、普通なら、一介の旅行者がふらりと訪れることができるような場所ではない。スラムといえども、無秩序に成り立っているわけではなく、80万人もの人々が生活する以上、そこには独自のルールやシステムが存在している。政府の土地に不法に居住せざるをえないという事実や、極度の貧困の中で生き抜いている事情など、住民にとって不安定な要素が多い暮らしに、外部からの訪問者がやってくることで、問題を引き起こすことがないとは言えない。

「スラムで学ぶためのプログラムをつくる」

そこで、ただでさえ困難な状況で生き抜いているスラム住民たちに迷惑のかかることがないように、細心の注意を払いながら、さらに、スラム住民の手によって外部者を案内することができるプログラムを作ることにした。外から来た人が、物見遊山でスラムの生活を覗き見するのではなく、スラムの人々が見て欲しい、知ってもらいたいと思うことを、彼ら自身が案内するというのが、最も理想的な形ではないかと実感する。

さて、「アフリカはなぜ貧しいのか」ということの全体像を理解するためには、様々な要素からアフリカの事情を知っていく必要がある。スラムはいわば、その表面に露出しているひとつの現象なのだから、スラムをぼんやりと見ているだけでは何もわかってはこないだろう。

なぜスラムができるのか。スラムの人々はどこから来たのか。そして、どのような事情によってスラムに住むことになったのか。子供たちは学校に行っているのか。人々は医療を受けることができるのか。政府はどのような対策を取っているのか。そもそも、毎日の生活は具体的にどのような様子なのだろうか。仕事はあるのか。ないならば、何をして暮らしているのか…。疑問は芋づる式に次から次へと浮かび上がってくるに違いない。

「アフリカ雑学入門」ツアーの意義

このような「謎解き」をしながら、ケニアの全体像をその輪郭だけでも掴むことができる旅のプログラムを作ることは、とても有意義だ。アフリカの抱える諸問題のみならず、世界の「富」の偏り、限られた資源をめぐっての戦い、など、大きな視野で地球を見つめるときにも役立つだろうし、自分の生活のあり方など、個人的な考察にも良い参考になる体験になると思う。

そんな旅の企画を、「道祖神」がはじめた。とても画期的なプログラムだと思うので、ぜひ多くの人々に参加してもらいたいものだ。

さて、このような経緯で生まれた「アフリカ雑学入門」ツアーだが、キベラスラムを案内してくれるのは、「スラムの白衣の天使」助産婦フリーダと、孤児のための寺子屋を運営しているリリアンという、すばらしいケニア人女性だ。2人とも貧しい境遇を乗り越えて社会に貢献するための活動を行っているパワフルな女性たちである。通訳と、様々な「謎解き」解説のために、私が同行する。

また、ケニアの全体像を知るために、農村の生活に触れ、ケニア社会の背景にある諸事情を学んでいく。農家にホームステイして、村の中を散歩して回り、彼らが普段食べているものを一緒に食べ、共に電気のない夜を過ごすという経験をすると、きっと、様々な「気付き」 をそこから得ることができるだろう。 

これからこのコラムでは、この旅で出会うことができる何人かのケニア人たちを紹介していきたいと思う。では、ケニアでお会いしましょう!

written by 早川 千晶

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