連載

vol.09 オーバーホール

時期こそ違え、一人で走った時と同じようなコースを走っている。が、印象は、全く異なって見えた。当然、遭遇する人達も違ってくる。2回目とはいえ、同じ出会いや状況が殆ど無い・・行く度に感じる新鮮さが、生きた《旅》の面白さかもしれない。もっとも、一人の時は余裕も無く、無我夢中で走り抜け、周囲を見廻すゆとりも殆ど無い状態だったなーと運転しながら、頭の片隅で追想していた。

と言って、今がゆったりしている訳では無い。今回は、一人旅とは明らかに違う背負っているモノが、あった。金を払って頂き、他人を連れて行く旅の経験は、初めてだった。日ごろ、サービス精神の欠如している自分が、道案内人として振舞う居心地の悪さを時折、感じていた。

雄大なサハラの中を旅は、進む。単調なもったりとした時間、風と砂が吹き荒れターバンを巻きつける日、砂が横走りし、しま帯状になる道、ただ・ただ暑いだけのぬるーっとした昼下がり、砂丘を無心に駆け上がる時間、逃げ水を追って走る日々、冷たいビールを想い浮かべる夕暮れ時、そして突然現れるオアシスに挙げる歓声・・・。様々な反芻するシーンを繰り返しながら、旅は進んでいった。《キャパシティ!》、人により容量の差があり、耐えられる限界も異なってくる。《ハードさ》に対する受け止め方も違ってくる。徐々に・確実にメンバー内に横たわる空気が、変わりつつある匂いがする。

食事・食材は、原則的に現地主義で! 現地で買えるモノの食材で食事を賄おうとの出発前の約束だった筈が、不満の発端は、この辺りから燻ってきた。食事に、肉が少ない・野菜が単調だ・朝食に卵やチーズが出ないのは、怪しい・・等々主催者に対してのクレームが、漏れ聞こえるようになり始めた。これは団長が、予算をケチっているからだ、儲けようとしている・・などと聞こえるような陰口が、少しづつエスカレートしてくる。

食事作りは、メンバーが3人づつ交代で当たる。市場や店に行っても、材料はこんなものしか売ってないのだから・・と、間接的に私の代弁者的な事を話している参加者は、いつの間にか主催者側のレッテルを貼られるようになる。

とかく、日本人は、○○派だとか○側であるとか色分けをしたがるような気がする。この旅もアンチ主催者(スタッフ)側とニュートラルな立場の参加者を含めた主催者側と言う様に・・。

私が担当するVWのオイル漏れが激しすぎるので、ナイジェリアのカノで思い切って、ディーラーにオーバーホールに出した。蟠っているメンバーの気持ちも、一週間の滞在の間に、心機一転のオーバーホールを期待していた。不満派に対し阿る気は無かったが、眼を外に向けて欲しかった。狭い隊の中で、他人の動向に神経を尖らせるより、もっと外に出て欲しかった。地元の人々と接触して欲しかった。《何の為に、ここに居るんだよ・・。》

サバンナからステップへと広大な大陸の風景や植生、緑の色々、通過する村々、そこに住む人々そして気温や湿気が少しずつ・ダイナミックに変化し、違った顔を見せてくれる。自分のペースでこの変化を受け入れ、アフリカに馴染むメンバーも居れば、楽しめず、心其処に在らずと見えるような人達も出始めた。

全員でテーブルを囲んで食べる夕食も、雰囲気が変わりつつあった。同じテーブルを避け、別の場所で食べるメンバーが現れた。初めは戸惑い、悲しくもありショックだった。どう対処するかスタッフ間で議論した。我々に強制力があるのか?・・と。《飯ぐらい一緒に喰おうよ》と、呼びかけるのが、当時は、精一杯だった。そんな中で感心させられたのは、隊として決めたルールや、職務(当番)は、誰一人も放棄せず、守ってくれた事だ。参加したメンバーに良い・悪いは、無い。些細なボタンの掛け違いが、生じているに過ぎない。が、当時はそんな事を思いやる心の余裕が、ほとんど無かった。我々も、アンチ主催者側もストレスが膨らみつつあり、後の爆発?に繋がっていった。

written by 道祖神|熊澤 房弘

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