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アフリカ・リミックスvol.01 「これは『アフリカ』ではない」

アフリカの現代美術を紹介する展覧会「アフリカ・リミックス」が東京・六本木の森美術館で8月31日まで開催中だ。
25か国、84人にも及ぶ作家による多様、かつ粒ぞろいの約140点を一堂に集めており、わが国におけるアフリカ美術の受容史の中でもエポックとなるだろう内容に仕上がっている。

興味をひくのは、この展示の企画・運営者や出品作家が「いわゆる『アフリカらしさ』を展示に求められても失望するだけ」と語っている点だ。来場者もなかなか鋭い。「面白い作品だねー。だけど、これのどこが” アフリカ“なんだろうね」とつぶやいている光景を一度ならず見かけた。

だが、それならば本展の作品を特徴づけるものは何なのだろう? (本文敬称略)


◇  ◇  ◇


▽ 『アフリカらしさ』を逆手に取る。
写真

「アフリカらしさ」を求める観客に対して、肩すかしを食わせる作品が目立つ。
「プリミティブ」「スピリチュアル」などアフリカのアートにまつわる紋切り型の見方を逆手に取った知的な表現、また西洋社会への批判的な視点を持った作品が多いのだ。

サミュエル・フォッソのセルフ・ポートレイトシリーズで披露されるものの中には、アフリカ人が抱かれやすい様々なステレオタイプを作家自身が演じる姿もあった。

ニューヨーク在住のワンゲチ・ムトゥ(ケニア出身)は「黒人」「アフリカ」といった文化的な符号を周囲から押しつけられることに触発され、あえてエスニックに見える作品を制作する。

エメ・ンタキィカも興味をひく。彼が現在住むベルギーの生んだ画家マグリットの油彩画をそっくりマネしたような作品を制作してみせるのだが、タイトルは画家の名前そのもの「マグリット」だ。
鑑賞しているとマグリットの「これはパイプではない」と文字が書き込まれたパイプの絵画を論述したミシェル・フーコーの言葉が自然と思い出される。
「私が何者であるかをおたずね下さるな、同一の状態にとどまれなどとは言って下さるな。同一であることは戸籍の道徳であり、この道徳が身分証明書を支配しているのです」(中村雄二郎訳)。
『知の考古学』序論末尾の一節である。この文章の「私」という言葉を「アフリカ」に置き換えて読んで欲しい。

「アフリカらしさ」を一方的に求められるアフリカの人々のいらだちをそこに読み取れるまで連想は広がるではないか。とはいえ、アフリカの諸国を侵略した過去を持つヨーロッパの住人と、ほとんどアフリカに対して無知(無垢?)な日本人とでは当然、作品に込められた皮肉や微妙なニュアンスを感じ取る能力に大きな差が出て来るとは思われるのだが……。


▽ リサイクル(再生)を武器に。

展覧会の企画者の一人、シモン・ンジャミがアフリカと西洋社会との関係性についてこう語っていた。
「アフリカに関して、これまでは西側からのモノローグ(おしゃべりの独り占め)ばかりで、ダイアローグ(対話、対等な意見交換)がなかった」ダイアローグを求めて、制作活動を続ける作家たちにとって大きな武器となるのが「リサイクル」だ。

展覧会場はリサイクル素材でいっぱいだ。
そもそも会場入り口に至るエレベーター周辺に設置された3作品はすべてリサイクル素材だ。

エレベーター横の壁面にかかったエル・アナツィの巨大な作品「ササ」。彼の母国ガーナで伝統的に制作されてきた織布「カンテクロス」を想起させる作品なのだが、繊維の代わりに缶や銅線などを使っている。

「ササ」の右下にあるのがロミュアルド・アズメの「武装した缶」。何の変哲もないプラスチック容器が素材だ。

目を右に転じると、そこにはウィリー・ベスターの「残された人のために」がある。金属の廃材を集めて作ったものだ。かつて彼はケープタウンの空港に近い自宅で私のインタビューに答えてこう語った。

「なぜ、こんなに重い廃材を使うのかって?『重さ』とは人々を抑圧する体制の愚かさや醜さを現している。同時に『重さ』は体制が振りかざす権力に対するレジスタンスとしても機能する。そんな異議申し立てを、街中にある素材で行うっていう意味が分かるかい。現代の資本主義社会では、大量生産、大量消費が前提だろ。
つまり、資本主義が発達するほど、制作の素材も手に入りやすくなるって訳さ」

創意工夫を凝らせば、金銭の豊かさはなくとも、美しく、力強い作品は制作できることを証明するかのように、会場内のあちこちにリサイクル素材を用いた作家が登場する。

内戦で使用された武器を使うゴンサロ・マブンダ(モザンビーク)、スラム街で捨てられている廃棄物を集めるアントニオ・オレ(アンゴラ)、ディロンプリズリケ(ナイジェリア)、ティトス(モザンビーク)ら、まだまだほかにもいるので注目して見て欲しい。

(続く)

(No.105 より転載)

written by 市原 尚士

アフリカ・リミックス
〔期間〕 2006年5月27日[土]―2006年8月31日[木]
〔会場〕 森美術館 六本木ヒルズ森タワー53階
〔開館〕 10:00-22:00|火10:00-17:00 ※いずれも入館は閉館時間の30分前まで <会期中無休>

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